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神戸地方裁判所 昭和56年(ワ)1020号 判決 1982年11月30日

原告

米津清司

被告

宮崎美椰子

ほか一名

主文

一  被告らは、原告に対し、各自金二四七万二四七一円及び内金二二五万二四七一円に対する昭和五四年九月三〇日から、内金二二万円に対する昭和五七年一二月一日からそれぞれ完済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを一一分し、その二を被告らの負担とし、その九を原告の負担とする。

四  この判決は第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告に対し、各自金一四〇二万二七〇六円及び内金一三〇三万三三〇六円に対する昭和五四年九月三〇日から、内金一〇〇万円に対する第一審判決言渡の日の翌日からそれぞれ完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  本件事故の発生

原告は左の交通事故(以下本件事故という。)により受傷した。

(一) 日時 昭和五四年九月三〇日、午後二時一〇分ころ

(二) 場所 兵庫県多可郡黒田庄町田高三一三―一二三先交差点(国道一七五号線)

(三) 加害車両 普通乗用自動車(神戸五六な八四八)

右運転者 被告 宮崎美椰子

右保有者 被告 宮崎正久

(四) 被害車両 普通乗用自動車

右運転者 原告(大正一一年五月二日生)

右同乗者 訴外 米津芳子

(五) 事故の態様 国道一七五号線を時速四五キロメートルで北進して前記交差点を進行中の被害車両の右側後部に、時速約二〇キロメートルで交差点を西進してきた加害車両前部が衝突し、被害車両は半回転して停止し、原告は後記傷害を負つた。

(六) 傷害の部位、程度

(1) 頸部捻挫、頭部外傷

(2) 昭和五四年九月三〇日丸野外科医院通院

昭和五四年一〇月一日及び同年一二月二四日田淵神経科内科診療所通院。

昭和五四年一〇月一日から同五五年四月三〇日まで(実治療日数三一四日)まで神戸労災病院に通院。

昭和五五年三月二六日、同年四月二日、同年一一月二五日、二六日大阪大学附属病院に通院。

昭和五五年一二月九日から同五六年三月三日まで(内実治療日数七日)神戸大学医学部附属病院に通院。

昭和五五年一二月一〇日に金沢三宮病院へ通院。

昭和五六年二月一〇日に甲南病院に通院。

昭和五六年二月一七日に新須磨病院に通院。

(3) 後遺障害、頸椎に運動障害が残り、それぞれ前屈四〇度、後屈一五度、右屈二五度、左屈二〇度、右回旋三五度、左回旋五五度以上の運動が不能。

大後頭神経に著しい圧痛、頸部神経根に圧痛、頸部運動時に頸部痛、その他両手掌、両足底部にしびれ感が持続し、頭重感が残る。

握力が右三〇キログラム、左四〇キログラムに減退した(なお、自賠責保険の認定は一四級であるが、少くとも一二級程度の障害を負つている)。

2  責任原因

(一) 被告宮崎美椰子は、時速約四〇キロメートルで加害車両を運転して西進、前記交差点に至り、一時停止の標識があるのにこれに従わず、かつ左右の安全確認を怠り、時速約二〇キロメートルに減速しただけで漫然右交差点に進入してきたところ、おりから国道一七五号線を北進して右交差点を進行中の被害車両の右側後部に、加害車両の前部を衝突させた。

仮りにそうでないとしても、被告宮崎美椰子は、右交差点で一時停止をしたが、左右の安全確認を怠り、漫然時速約二〇キロメートルで右交差点に進入し、おりから国道一七五号線を北進して右交差点を進行中の被害車両の右側後部に、加害車両の前部を衝突させた(民法七〇九条、自賠法三条)。

(二) 被告宮崎正久は、被告宮崎美椰子の夫であり、加害車両を所有し、自己のため運行の用に供していた(自賠法三条)。

3  損害

(一) 治療費 金九〇万五一九三円

(1) 田淵神経科内科診療所治療費 金三万〇三二〇円

右文書料 金二〇〇〇円

(2) 神戸労災病院 金八〇万八五〇七円

右文書料 金二万円

(3) 大阪大学医学部附属病院治療費 金一万六二八七円

(4) 神戸大学医学部附属病院治療費 金三三〇〇円

右文書料 金八〇〇〇円

(5) 金沢三宮病院治療費 金七七八〇円

(6) 甲南病院治療費 金四〇二九円

(7) 新須磨病院 金四九七〇円

(二) 通院交通費(神戸労災病院) 金二〇万〇九六〇円

垂水・三宮間の片道電車賃二一〇円、三宮・野崎三丁目間の片道バス料金一一〇円の往復合計六四〇円のところ、通院日数三一四を乗じる。

(三) 休業損害 金四〇三万〇四八一円

原告は、昭和五四年一〇月一日から昭和五六年四月三〇日までの五七八日間のうち、神戸労災病院だけで三一四日の通院をせざるをえなくなり、右五七八日間は全く就労不能となつた。

原告は、本件事故当時、クレーン運転手として稼働し、その事故前の四か月間に七六日働き合計金六四万四八二五円の収入があり、一日当り金八四八四円となる。一か月間に少くとも二五日の労働が可能であるので月金二一万二一〇〇円、年金二五四万五二〇〇円の収入を得ることができたところ、前記就労不能となつた期間収入を失なつたので、その休業損害は金四〇三万〇四八一円(254万5,200円×578÷365=403万0,484円)となる。

(四) 後遺症による逸失利益 金八三八万四六五二円

原告は、前記後遺障害のため、現在もほとんど毎日通院を余儀なくされており、このため休みをとる必要がある。よつて労働能力喪失率は五〇パーセントとするのが相当であり、その期間は昭和五六年五月一日から昭和六四年五月二日まで八年間であるから、その後遺症による逸失利益は、金八三八万四六五二円(254万5,200円×0.5×6.5886(ホフマン係数)=838万4,652円)となる。

(五) 慰藉料 金三二〇万円

(1) 傷害(通院)慰藉料 金一二〇万円

原告は、事故の日から昭和五六年四月三〇日までの五七八日間のうち、神戸労災病院に限つても三一四日の通院を余儀なくされたので右精神的苦痛を慰藉するためには少くとも金一二〇万円が相当である。

(2) 後遺症慰藉料 金二〇〇万円

(六) 損害の填補 金三六九万八五八〇円

以上(一)ないし(四)の合計額は金一六七三万一八八六円であるところ、原告は、被告らから、金二八九万八五八〇円、自賠責保険から金八〇万円の合計金三六九万八五八〇円の支払を受けたから、その差引損害額は金一三〇三万三三〇六円となる。

(七) 弁護士費用 金一〇〇万円

よつて、原告は、被告らに対し、自賠法三条及び民法七〇九条に基づき、金一四〇二万二七〇六円及び内金一三〇三万三三〇六円に対する昭和五四年九月三〇日から、内金一〇〇万円に対する第一審判決言渡の日の翌日からそれぞれ完済まで年五分の割合による金員の連帯支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の(一)、(二)、(三)、(四)、(五)(被害車両の速度は否認)は認め、(六)は不知。

2  請求原因2のうち、(一)の前段を否認し、(一)の後段及び(二)を認める。

3  請求原因3のうち、損害の発生については否認する。

三  抗弁

1  過失相殺

原告進行方向からの、本件交差点の見通しは、障害物もなく全く良好であり、当時、先行車両も対向車両もなかつたにもかかわらず、前方注視を全く怠り、漫然本件交差点に進入した過失がある。

2  弁済

被告らから原告に対し、訴外米津芳子の損害分として金一万八一〇〇円が支払われているが、他方、原告は、訴外芳子の分として自賠責保険から支払われた金員を自分の治療費にあてているのであつて、二重払いを受けた金一万八一〇〇円については、原告に対する弁済とみなされるべきである。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実について

原告の進行道路は優先道路で、かつ被告宮崎美椰子の進行道路は一時停止の標識まである。減速しながら交差点にさしかかつてきたか、もしくは交差点手前で一時停止をしている加害車両を、原告が現認したとしても、加害車両は停止して交差点に進入はしないと信頼するし、その信頼は保護されなくてはならない。したがつて原告に落ち度はない。

2  抗弁2の事実について

原被告間の差額一万八一〇〇円は訴外米津芳子の治療費として受領したものであるので、本件において控除されるべきものではない。

第三証拠〔略〕

理由

一  本件事故の発生について

1  請求原因1の(一)、(二)、(三)、(四)、(五)(被害車両の速度を除く。)及び請求原因2の(一)の後段は当事者間に争いがなく、右いずれも争いのない事実に成立に争いのない乙第七号証ないし第九号証、被告ら主張のとおりの写真であることにつき争いのない同第一三号証の一ないし五、同第一五号証の一ないし七、原告本人尋問の結果、被告宮崎美椰子本人尋問の結果(これらのうち後記採用しない部分を除く。)によれば、次のとおり事実を認めることができる。すなわち、被告宮崎美椰子は、兵庫県多可郡黒田庄町田高三一三―一二三先交差点(国道一七五号線と県道の交差する信号機のない点であり、中央線の表示等により国道の方が優先道路となつていた。)で、県道を西進して本件交差点に至り一時停止の標識に従い一時停止をしたが、左右の安全確認を怠り、漫然時速約二〇キロメートルで右交差点に進入し、おりから国道一七五号線を北進して右交差点を進行中の被害車両の右側後部に、加害車両の前部を衝突させた。一方原告にも、原告の進行する道路が優先道路ではあるが、交差点の前後左右を注視して運転すべき注意義務があるところ、原告進行方向からの本件交差点の見とおしは障害物もなく全く良好であり、当時、先行車両も対向車両もなかつたにもかかわらず、事故直前まで前方右方向に対する注視を怠り、時速約五〇キロメートルで漫然本件交差点に進入し、自車右側後部に加害車両の前部を衝突させた過失がある。

ところで、原告は、第一次的には、被告宮崎美椰子は本件交差点において一時停止を怠つたと主張するが、これを認めるに足る証拠はなく、かえつて前掲各証拠等によれば、前記のとおり事実を認定することができる。また、前掲各証拠中には、右認定とくい違う部分も存するが、これらは採用しないこととし、他に前記認定を左右すべき証拠はない。

2  いずれも成立に争いのない甲第二、第三号証、第四号証の一ないし六、第五号証、第六号証の一ないし四、第七号証の一、二、第八号証の一ないし三、第一二号証、乙第一一号証、いずれも趣旨及び方式により公務員が職務上作成したと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第一五号証の一ないし四、同第一六号証の一ないし六、証人荒堀弥須男の証言及びこれによつて真正に成立したものと認められる甲第一二号証、原告本人尋問の結果及びこれによつて真正に成立したものと認められる甲第一三号証、同第一四号証の一、二を総合すれば、次のとおり認めることができる。すなわち、原告は、本件事故により、頭部外傷及び頸部捻挫の傷害を受け、昭和五四年一〇月一日から現在(弁論終結時)にいたるまで神戸労災病院において通院治療を受けたほか、昭和五四年九月三〇日丸野外科医院に通院治療、同年一〇月一日及び同年一二月二四日に田淵神経科内科診療所に通院治療、昭和五五年三月二六日、同年四月二日、同年一一月二五、二六日に大阪大学医学部附属病院に通院治療、昭和五五年一二月九日から同五六年三月三日まで(内実治療日数七日)神戸大学医学部附属病院に通院治療、昭和五五年一二月一〇日に金沢病院に通院治療、昭和五六年二月一〇日に甲南病院に通院治療、昭和五六年二月一七日に新須磨病院にて通院治療、昭和五六年一〇月一六、二三日、一一月一〇日、二〇日に兵庫県立姫路循環器病センターに通院治療をそれぞれ受けたことが認められるが、一方、この間、頭部外傷については昭和五五年三月二五日神戸労災病院において治癒の診断が出ており、また、頸部捻挫も昭和五五年一〇月二一日神戸労災病院において症状固定の診断が出ている。

原告の後遺症は、自覚的症状としては、後頭部より頭頂部への痛み及び異物感、頭重感、頭部を左右に回旋すると頭がボヤーとする、両手掌、両足底部にジンジンした感じが持続するほか、不眠、性交不能を訴えるが、他覚的症状としては、大後頭神経の強度の圧痛、頭部神経根に軽度の圧痛、レントゲン検査で頸栓前屈時C3/C4後屈時C4/C5で角状形成を見るほか、頸椎に前後屈、左右屈、左右旋回の各制限があり、また握力低下(ことに右手に顕著)が見られるものの、脳波、前庭機能検査、示標追跡検査、視運動性、眼振検査では異常が認められない。

以上の事実が認められ、右認定を左右すべき証拠は見当らない。

二  責任原因について

1  請求原因2のうち(一)の前段以外は当事者間に争いがないので、被告宮崎美椰子が民法七〇九条所定の不法行為責任を負うべきこと、被告宮崎正久が自賠法三条所定の運行供用者責任を負うべきことは明らかである。

2  もつとも、本件事故の発生については、前記のとおり、被害車両を運転していた原告も、交差点に進入するに際し、前方注視を怠り、漫然本件交差点に進入したのであるから、この点を被害者の過失として斟酌して、一〇パーセントの過失相殺をすることとする。

三  損害について

1  治療費等 金八二万〇四二四円

(一)  神戸労災病院における治療費等 金八一万〇〇一四円

前掲甲第四号証の三ないし六によれば、神戸労災病院における治療費(文書料を除く。)として昭和五四年一〇月一日から同年一二月二五日までの分として金二〇万〇四四〇円、同月二六日から昭和五五年三月二五日までの分として金一九万三六二〇円、同年二月二六日から同年三月一八日までの分金一万九三二〇円、同月二六日から同年七月三一日までの分金三五万一七八〇円、同年八月一日から同年一〇月二一日(症状固定時)までの分金二万一三五四円、以上合計金七八万六五一四円を認めることができ、また、文書料として合計二万三五〇〇円を認めることができる(原告の主張額金二万円を超えるが、治療費と一体とし計上すべきものとも考えられるので、右金二万三五〇〇円を認める。)。

右の合計は八一万〇〇一四円となる。症状固定後の同病院の治療費については、原告の治療経過にかんがみると、本件事故と相当因果関係のあるものとは認め難い。

(二)  右以外の治療費 金一万〇四一〇円

前掲甲第六号証の三、四によると、原告は昭和五五年三月二六日及び同年四月二日に大阪大学医学部附属病院で治療を受け、合計金一万〇四一〇円を要したことが認められ、右治療費は本件事故によるものと認めるのが相当である。

その余の治療費については、前掲甲第四号証の二によると、田淵神経科内科診療所の治療費は宮崎正久が支払つていることが明らかであり、大阪大学附属病院治療費の残余の分、神戸大学医学部附属病院、金沢三宮病院治療費、甲南病院治療費、新須磨病院治療費は、いずれも症状固定後のものであつて、原告の治療経過にかんがみると、本件事故との因果関係を肯認し難い。

2  通院交通費(神戸労災病院) 金一四万七二〇〇円

前掲甲第四号証の三ないし六によれば、原告は昭和五四年一〇月一日から症状固定までの同五五年一〇月二一日まで二三〇日間神戸労災病院に通院したことが認められ、また、弁論の全趣旨によると、一回の通院につき垂水・三宮間の片道電車賃二一〇円、三宮・野崎三丁目間の片道バス料金一一〇円の往復合計六四〇円を要したことが認められる。したがつて通院交通費は合計金一四万七二〇〇円となる。

640円×230=147,200円

その余の症状固定後の通院交通費については、本件事故との因果関係を認め難い。

3  休業損害 金二六九万一六三六円

原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第九号証の一ないし三及び成立に争いのない同第九号証の四、五によれば、原告は大正一一年五月二日生れであつて(この点は当事者間に争いがない。)、本件事故当時は臨時雇のクレーン工として、過去四か月の間に七六日働き、合計金六四万四八二五円(日給八四八四円)の収入を得ていたところ、一か月に二五日働きうると認められるから(昭和五四年七月の労働日数が少いのは例外とみるべきである。)、月収を二一万二一〇〇円、年収を二五四万五二〇〇円とするのが相当であるが、本件事故による受傷とその治療のため現在に至るまで休業していると認められる。しかし、休業損害としては、本件事故発生の翌日たる昭和五四年一〇月一日から、神戸労災病院において症状固定と診断された同五五年一〇月二一日までの分(三八六日)を計上すべきである。

2,545,200×386/365=2,691,636(円未満切捨)

4  逸失利益 金九七万三一三一円

原告の前記認定のような後遺症の内容・程度(その多くは自覚的症状であるが、頸椎の屈曲・回旋制限、握力低下、X線における角状形成など他覚的とみうる症状もあり、また、医師により、大後頭神経痛は頑固に症状を残すものと予測されている。)と、原告のクレーン工という職種(事務職等に対比すると、本件後遺症による労働に対する影響は大であると考えられる。)に照らして判断すれば、原告の後遺症に起因する労働能力喪失率を一四パーセントと認めるのが相当であり、労働能力喪失期間は三年間と考えるのが相当である。

したがつて、原告の後遺障害に基づく逸失利益は金九七万三一三一円となる。

2,545,200×0.14×2.7310=973,131(円未満切捨)

5  慰藉料 金二〇〇万円

本件事故の態様、原告の受傷の部位、程度、通院期間、後遺症の程度・内容その他諸般の事情を総合すれば、原告の被つた精神的苦痛に対する慰藉料額は、金二〇〇万円をもつて相当とする。

6  過失相殺 原告の損害額は金六六三万二三九一円であるが、既に認定したとおり本件事故の過失割合は被告宮崎美椰子が九〇パーセント、原告が一〇パーセントとするのが相当であるから、原告の被告らに対する損害賠償額は金五九六万九一五一円(円未満切捨)となる。

7  損害の填補 金三七一万六六八〇円

損害の填補として金三六九万八五八〇円が支払われたことは当事者間に争いがなく、また、成立に争いのない甲第一一号証及び原告本人尋問の結果によれば、訴外米津芳子分として支払われた金一万八一〇〇円についても、原告の治療費に支出されたことが認められるから、填補の合計は金三七一万六六八〇円となる。

そして、これを控除すると、損害賠償額は金二二五万二四七一円である。

8  弁護士費用 金二二万円

原告米津が訴訟代理人山根良一、同野澤涓に対し、本件訴訟の提起と追行を委任し、弁護士会所定の報酬規定に測り報酬額等を支払うことを約したことは弁論の全趣旨によつて明らかであるところ、本件事案の難易度、本件審理の経過、内容、請求金額とその認容額、その他諸般の事情を検討すれば、弁護士費用としては金二二万円をもつて相当因果関係の範囲内による損害額と認める。

これを加えると、損害賠償額は合計金二四七万二四七一円となる。

四  結論

以上の事実によれば、本訴請求中、被告らに対し、連帯(不真正)して本件事故による損害賠償金として合計金二四七万二四七一円及び内金二二五万二四七一円に対する本件事故後である昭和五四年九月三〇日から、内金二二万円に対する昭和五七年一二月一日からそれぞれ完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める部分は理由があるのでこれを認容し、その余は理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 岩井俊)

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